file01:「宗教」はどこにある?

僕は大学の授業で最初に「宗教というものはないんだ」と、説明しています。キリスト教、イスラムというように個々にはあるけれども、「宗教」というのは単に包括的なカテゴリーとしてあるだけである、そこを誤解してはいけない、と。

もうひとつ、宗教に関してよくある間違いとして学生に話すのは、あの人は信仰しているっていうけれども、生活は滅茶苦茶じゃないかと。「あれ、ほんとに信仰者なの?」というケース。ときどきありますよね。しかし宗教の理念と人の行動というのは当然違うのであって、人を見て宗教を判断してはいけないということなんです。そうではなくて、彼はもちろん凡人で、罪人で、業にまみれているのだから醜い行いは当然であって、だからこそ救いを求めたり、修業をしたりしているのだ、というふうに考えなくてはいけない。ことによったら、その人は宗教の3%ぐらいしか体現できていないかもしれないわけです。

ただしですね、宗教の世界というのは、個々人の中からしか見えないんですよ。宗教の世界は必ず誰かが信仰しているからこそあり得るわけで、信仰者のいない宗教はあり得ない。宗教は人を超越したところにあるんだと思いながら、でもやっぱり個人の中を見るしかないんです。

TEXT : Michiaki Okuyama, Rue Ikeya  DATE : 2010/10/29