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おとなりの研究者
東京大学
大学院情報学環
交流研究員

大阪大学
文学研究科 文化表現論専攻
教授

国立情報学研究所
社会共有知研究センター
センター長・教授

日本大学
芸術学部デザイン学科
教授

秋田大学
教育文化学部
准教授

file 03:みんなで話し合って。

先月、『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』が出版されました。今回の小説は、藤子・F・不二雄先生の1986年の漫画を原作として書いたもので、今年アニメもリメイクされ、『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ 天使たち〜』として公開されました。

藤子先生は、ある種の理想主義者だと思います。やはりユートピア社会への希望をつねに描いていらした。そのユートピアを創るためにどうすればいいか。それを科学の力でサポートしましょうという思想の持ち主なんですね。環境問題にも強い関心を示していらっしゃいましたし、そうした環境問題を解決する科学の力を熱心に『ドラえもん』の中で描かれていました。ドラえもんがポケットから出す未来の道具は僕たちの科学技術の象徴ですが、それだけではだめな場合もあって、晩年になってくるとさまざまな生き物が一堂に集まってみんなで話し合って答えを考えましょう、というストーリーもあるんですよ。『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』の中にも、この理想への信念と、そして科学のサポートがどのようにユートピアを創るのか、異質なコミュニティに生きる人々がどのように心を通わせ、互いに思いやるのか、というテーマがあることがおわかりいただけるのではないかと思います。

原作=藤子・F・不二雄、著=瀬名秀明
小学館   2011年3月2日発行   ISBN978-4-09-289726-7


お話は……宇宙のかなたにロボットだけが暮らす惑星があって、そのロボットたちが地球人を奴隷にしようと攻めてくる。しずかちゃんがタイムマシンに乗って、3万年前にロボットたちを創設した“神様”に会いに行き、助けを求める。実はそれ、ロボット学者なのですが、彼は、ロボットの競争本能が強すぎたのかもしれない、代わりに「他人を思いやるあたたかな心を……」といってロボットを改造するのです。

この「思いやり」とは何か。僕はさきほどの「エンパシー」だと思うんです。僕たちが成長と共に育んでゆく能力です。今年のリメイク映画でも、ロボットのユートピア社会を創ろうとした“神様”は、他人を思いやるあたたかい心を「育てよう」と決意の言葉を発していて、寺本幸代監督が作品のテーマ「思いやりの心」を幅広い年齢層にいかに伝えようとしたかはっきりと感じ取れる傑作に仕上がっていました。映画を観て感動した子どもたちが、成長してさらに思いやりの心を育んでゆくその過程を、しっかりと見据えていたのです。

では、僕たちのこれからの科学はどうなのか。このエンパシーをロボットに育てることができるだろうか? またそのようなロボットの感情情動が3万年かけてどう進化していくだろう? ロボットの社会はどう変化するだろうか?……いろんなことが考えられます。僕は今回、小説というメディアを通して、藤子先生の願いや希望を伝える仕事に取り組みました。漫画とアニメ、小説では、それぞれ感動のポイントも違います。しかし人の心を動かし、未来を創ることでは同じです。小学生や中学生の読者にも、たとえば「大人になったら思いやりのあるロボットをつくるぞ!」みたいなエモーションをかき立てることができれば、うれしく思います。