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おとなりの研究者
慶應義塾大学
環境情報学部環境情報学科
教授

東京大学
大学院教育学研究科
准教授

玉川大学
工学部 情報通信工学科
教授

大妻女子大学
社会情報学部
講師

file 02:ヒントは「オノマトペ」!?

この「玉川大学赤ちゃんラボ」で今行っている多くのプロジェクトのひとつに、まだ言葉を話さない赤ちゃんが、ビジュアルな形と音との間に何らかの整合性を見出すかどうかを調べる実験があります。まずギザギザの形をした図形とまるっこい図形の映像、そして私たち大人がその図形の名として整合性を感じる架空の語である「キピ」と「モマ」という音声をそれぞれ用意します。そして図形と音を組み合わせた映像を視聴してもらい、これに対して赤ちゃんがどう反応するかを、脳波測定によって見ていくんです。

ご周知のように、私たちの言葉の意味と音との間には恣意的な関係しかないと考えられています。リンゴという物が「リンゴ」と呼ばれなければならない理由はないわけですね。もちろん実際多くの言葉はそうなのだけれども─私たちのレキシコンのなかには明らかに、意味とその音が関係しているものがありますよね?

1歳ぐらいの赤ちゃんがどういうふうにして最初の言葉を話し始めるか、あるいはそのくらいの赤ちゃんに対してお母さんがどういう語りかけをしているかを見ていくと、「ワンワン」「ゴロゴロ」「ドッカン」といった、すなわち「オノマトペ」をものすごく使用することがわかっています。

日本語はオノマトペが豊かだと言われていますが、何も日本語に限らず、英語ならたとえばドアが閉まるのを「BANG!」と表現することがあるし、オノマトペそのものはおよそどの言語にもあり、しかもそのどの言語でもほとんどの場合、お母さんが赤ちゃんに対してオノマトペを多用するという現象が見られるんです。つまりこれは、赤ちゃんがブートストラッピングの一番の端緒をいかに作るかという時に、お母さんたちがいろいろ工夫しているのではないか、と。

これを別の角度から見ると、子供の脳は大人の脳に比べて、聴覚情報や視覚情報を処理するモジュールが整理されていないと言われているんですね。比較的きれいに配線されている大人でさえ、聴覚情報が視覚処理に影響を与えたり、その逆が起こったりする「多感覚統合」という現象が指摘されています。赤ちゃんの場合には、整理されていないぶん、聴覚と視覚の自然な統合みたいなものが大人よりもっと極端にあるのではないかという考えがあります。そこで、オノマトペで語りかけられた時に、多感覚統合が起こることによって、赤ちゃんの中で、初めて聞く言葉が、もう何も教えられていないのに意味があるように思えてしまうのではないか、という可能性も考えられます。

「Referential Insight」を得るために、赤ちゃんの中にはそもそも語と意味の関係を自発的に検出するしくみがあるのではないか?─それはどちらかというと言語の学習とは無関係に、持って生まれた脳のしくみとしてあるのではないか、と私は考えています。