file 02:リケジョ100年から未来へ

東北大学は、日本初の「女子学生」が誕生した大学なんですね。そこで今年は女子学生100年を記念して、去る2013年8月8日に「女子学生入学100周年記念シンポジウム」を行いました。

今からちょうど100年前の大正2年8月8日、東北大学では体格検査があり、9、10日に筆記試験が行われ、13日の合格発表で、黒田チカ、牧田らく、丹下ウメという3人の合格が発表されました。黒田さん、丹下さんのお二人は理学部化学科、牧田さんは理学部数学科、つまり日本初の女子学生は「リケジョ」だったんです。

16日には本当に女子が入学するんだという新聞報道があったとのこと。当時大学というものは旧制高校を卒業した男子学生のための学校と考えられていたので、文部省からは9日付けで大学に取りやめるように圧力をかけた書簡が送られてきましたが、東北大学はそれをはねつけました。

3人は卒業後も、副手や大学院生として、数年間、大学での研究生活を送られました。そして中でものちに東京女高師(現・お茶の水女子大学)で教員を務め、紅花の色素に関する研究等で業績を上げた黒田チカ先生の資料が、時を経て、このほど遺族から大学へ寄贈されることになりました。書簡類、写真、研究ノート、研究室で着用していた実験着などの貴重な資料を現在整理しているところで、今秋から少しずつ公開して、みなさんに見ていただく予定です。

8月8日のシンポジウムでは、男女共同参画から女性リーダー育成へ向けた講演などが行われ、特にパネル・ディスカッションでは、かなりの本音トークが飛び交いました。おそらく、元学術会議会長の黒川清先生も煽ったからかもしれませんが(笑)、たとえば東北大学で初めて育児休暇をとった男性教員である高橋幸弘先生(北海道大学教授)や、宇宙飛行士・向井千明さんの夫で医師の向井万起男さんにもご参加いただきました。その時、向井さんが言われた「女性のほうが正論を言いますよね」といったお話なども印象深かったですね。

女子学生入学百周年記念ロゴマーク(上図)について:
東北大学は1913年に日本で初めて女子学生3名の入学を認めました。このたびその百周年を記念し、今後百年の女子学生の活躍に期待して、ロゴマークを制定しました。本ロゴマークでは、試験管を持った女性が理学部化学科に入学した2名(黒田チカ、丹下ウメ)を象徴します。また、七曜紋は数学の空間充填問題にあたることから同数学科に入学した1名(牧田らく)を表すとともに、本学のシンボルでもある北斗七星(北の空に輝き人々を導く星)も意味します。メインカラーの紅は、天然色素の研究をしていた黒田が博士号を取得した折に「紅(くれない)の博士」と呼ばれたことに因みます。