file 01:フロイトは脳科学をしたかった!?

「心」や「無意識」をテーマにしたのは確かにフロイトユングですが、フロイトはそもそも医師であって、もしも技術さえ進んでいれば、脳の研究を科学としてやりたかったんだと思うんですよね。心理学というのは、「心」なり「無意識」というものを、現象論的に扱うような方向へ行ってしまったのではないでしょうか。

現象論そのものはもちろん有用な部分もありますが、そうなると落とし所がたくさん存在しうるというか、一種信仰に近いかたちにさえなってきます。これは別に「無意識」に限らず、「科学」もある意味できっと宗教に近い捉え方をされているのではないかとも思っています。これは仏教キリスト教イスラム教といったいわゆる宗教と何ら変わらないものであって、つまり絶対超越的な神があって、あそこに座っていればいいんだ、あの神様は何でも助けてくれるんだ、という感覚ですね。しかし「無意識」は……いったい何を助けてくれるのかが、よく分からないんですよ。どこか辻褄が合っていないような気が、いつもする。

フロイトはサイエンスをしたかったはずだ、と僕は考えていますね。サイエンスの言葉で、分からないこの中身を記述したかった。けれども、彼の時代にはそういった技術はなかったために、中途半端に合理性を求めることになったのではないでしょうか。でも、合理的ではないんです。その不愉快さが僕には合わなくて、何とかしたいなと思った。できるところは、ちゃんと記述できるようにしたい、と常に考えていますね。