つながるコンテンツ

智のフィールドを拓く トビタつための星 可能性を照らす道 未来を探るひきだし 明日へとつなぐ鍵 変化をひらくドア 研究の壁をこえたとき Moyapedia
おとなりの研究者
首都大学東京
都市教養学部理工学系生命科学コース
助教

国立遺伝学研究所
生命情報研究センター
特任研究員

特定国立研究開発法人理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター
分子配列比較解析ユニット
ユニットリーダー

国立遺伝学研究所
生命情報・DDBJ研究センター
教授,副所長

国立遺伝学研究所
准教授

file 03:生命情報は「有限」である

分子生物学は、モデル生物で得られた知見が、生物への普遍的な理解につながるという考えから、20世紀の後半以来、非常に大きな成功を収めてきました。しかしその一方で、やはり生物の持つ多様性には、あえて目をつぶってきたという側面があります。マウス、ショウジョウバエ線虫などのモデル生物は、飼育しやすい、遺伝的に扱いやすいといった理由で選ばれており、マウスでわかったことが哺乳類全般にもあてはまるかどうかは、疑問があります。

たとえば嗅覚についても、哺乳類全般の中で一番多くのフェロモン受容体を持っているのはマウスであることがわかってきています。ところがフェロモン研究の多くはマウスを使って行われており、かなり特殊なケースを見ている可能性も否定できません。

ところがこの数年、次世代シーケンサーの普及によって、非常に大量のゲノムデータを解読できるようになりました。むしろデータの増え方が急速すぎて、解析が追いつかない状況です。今や、ひとつの研究室でひとつの生物のゲノムを決めることができるフェーズに入ってきており、モデル生物でない一般の生物のゲノムもどんどん決まってきています。脊椎動物10,000種のゲノムを決めようという「GENOME 10Kプロジェクト」も始動しており、主要な哺乳類すべてのゲノムが決まるのも時間の問題となってきました。

このような研究の流れの中で、私が一番大きな出来事だったと思うのは、生物情報の「有限性」がわかるようになったということです。ヒトがある遺伝子を持っていることはその遺伝子が見つかればわかりますが、持っていないということは、全部調べてみなければわかりません。逆に言えば、ヒトが持つ約2万2千個の遺伝子を全部調べればそれで全部だということ。いくら複雑でもそれ以上は存在しないということ。─これがわかったことは、ゲノム科学の大きな貢献だったと思います。

ゲノム科学の時代、今まで目をつぶってきた多様性に、これからいよいよ目を向けることができる─そんな時代がやってきたと考えています。だからこそ生物を目指す学生のみなさんは、ぜひインフォマティクスを勉強してください。