file 01:「分からないこと」を心の中で育てる。

初回の講義の中で、「分からないことを大事にしてほしい」と学生に語りかけました。講義では、分からないこともたくさん出てくることでしょう。自分は何が分かっていないかさえ、明確にできないこともあります。

分からないことは苦しいし、不快なことかもしれません。疑問点はさっさと忘れた方が気が楽だと思う人もいるでしょう。しかし、難しい概念を理解するときは、分からないと感じたことを切り捨てずに、それを心の片隅において、ゆっくり育ててほしいのです。そのうちに、何が分からないか、を言語化できることもあるでしょう。新たな知識や別の視点に触れて、すっきりと理解できることも、逆に、いつまでも解決できない疑問もあるかもしれません。いずれの場合も、分からないことを心の片隅においておくことで、対象に対する感受性が高まります。「分からないことを、ゆったりと心の中で育てる」ことで、自分自身の論理思考を強化し、また、ブレークスルーにつながる力も培われるのだと感じています。