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おとなりの研究者
文部科学省科学技術・学術政策研究所
科学技術予測センター
センター長

九州大学
科学技術イノベーション政策教育研究センター
准教授

文部科学省科学技術・学術政策研究所
科学技術・学術基盤調査研究室長

文部科学省科学技術・学術政策研究所
科学技術予測センター
主任研究員

岡山大学
大学院自然科学研究科
助教

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研究の壁を越えたとき IV

これからの研究者を予測する!?

科学技術政策研究所
桑原輝隆所長

今回のインタビューは、国際的な視野から、長年にわたり日本の科学技術動向をウォッチしてきた、文部科学省科学技術政策研究所の桑原輝隆所長だ。「数学力」の将来に警鐘を鳴らしたレポート『忘れられた科学 - 数学(2006年5月)』をはじめ、客観的なデータの積み上げに基づき、日本の科学技術を予測する提言を行ってきた氏に、今後どのような研究が重要になるのか、その中で研究者がどうあるべきか、読み解くヒントをいただいた。

日本の研究者を考えるふたつのサーベイ

90年代の初め、研究機関として政策研究所が発足し、私はその翌年ぐらいに来たんです。最初の12〜3年間の主な仕事は、今後どのような技術がどれだけ発展するかという技術予測。日本の全分野の技術予測を、2年間がかりで分析するんですね。分野ごとに専門家の委員会を作って、大学の先生方、政府系の研究機関の研究者、また分野によっては産業界の方にも入っていただき、議論していただく。当時の日本の強みは、なんといってもエレクトロニクスという時代でした。

『忘れられた科学 - 数学』についても2001年頃から準備を始めて、研究者にアンケートをするなど、いろいろな試みを重ねました。そのような中でたまたま生命科学系の科学者へ質問した時に、数学の置かれている状況がクリアに出てきたんです。「あなたの研究分野では数学的知識を必要としていますか?」─ほとんどの方が必要だと。この分野ではすでにゲノムという、数学を必要とする世界が中心になってきていたんですね。そこで「あなたのチームに数学がバックグラウンドの研究者はいますか?」─ほとんどがいないと。もうひとつ「あなたのライバルである海外の研究グループには数学者や数学出身者が入っていますか?」─圧倒的にいるという。

一方、ちょうど同じ頃に、日本の研究者集団は海外からどう見られているのか「欧米の一流研究者約100人へのインタビュー」調査も行いました。すると全体の約3分の1の分野の研究者から、世界の最先端では新しい研究の芽がどんどん出てくるし、重点もどんどんシフトしていくのに、日本の研究者はそれについて来ない、というコメントが寄せられたんです。また日本は実験系を中心に優れたデータを出して大きな貢献をするようになった。けれどもそれを理論化して、新しい科学分野として構築することができていない、という意見も多かった。この構築ができないというのは、つまり科学の歴史に、はっきりした痕跡を留めることができないということなんです。

制度が変われば、マインドも変わる

今、科学のどの分野でもある程度の成果が積み上がっており、それをどう活かすかというフェーズに入ってきています。ここから新しい分野の基礎を構築していくためには、数学、特に数理モデルが要となってくるに違いありません。そこがうまくつながっていかない理由のひとつには、数学者がなかなか異分野に入っていかないこともあるでしょう。ただこれは、より根本的な問題で、日本ではある分野で実績のある方が別の分野に移動しようとしても、非常にバリアが強いわけです。アメリカの優秀な研究者は生涯で2、3回は、メインフィールドを変えますよね。むしろ同じところにしがみついてたら「あいつはだめだ」ってレッテルを貼られる。

なぜ日本ではそうならないのか? これをマインドの問題に帰着すると、思考停止になってしまって、何も出て来ません。そうではなくて、制度設計の問題だと。そこさえ変われば人も変わる。たとえば科研費の制度にしても、日本でも若手を対象としたグラントができましたが、アメリカの場合、○○歳までという年齢制限ではなくて分野へのニューカマーを対象とするグラントがあります。他の分野から来たときに、うまく”つなぎの資金”として使えるようになっている。

アカデミーを俯瞰する「サイエンスマップ」

論文データベースを基に、注目される研究領域の相互関係を俯瞰する「サイエンスマップ」も2年ごとに作成して、今年で4回目になります。これは数理モデルを使って、分野間の近い・遠いなどの関係や、周辺にどのような研究があるのか、そしてその変化などが観測できるものです。研究プログラムの諸計画のための基礎的な情報を提供するのはもちろん、現場の研究者の方に新しい行き先を考えてもらうきっかけになることが重要だと考えています。このような計算結果だけで新しい分野へ行ってみようと思いつくことはないにしても、自分の直観が正しいかどうか検証するのには役立つのではないか、そんな期待をしています。

では、最初の思いつきはどこから生まれるかというと、やっぱり他の人とのコミュニケーションだと思うんですよね。国内のコミュニケーションももちろん大事だけれども、特に海外の人と話さなければいけない。ところが最近、海外へ出て行く若手の絶対数が減っているという事実があるんです。中国の躍進などを考え合わせると、このよく言われる若者の「引きこもり傾向」には、危機感がありますね。

文:桑原輝隆・池谷瑠絵 写真:水谷充 取材日:2010/08/11