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おとなりの研究者
大阪市立大学
大学院工学研究科
准教授

芝浦工業大学
教育イノベーション推進センター
教授

八戸工業大学
工学部 電気電子システム学科
助教授

和歌山大学
システム工学部 光メカトロニクス学科
教授

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可能性を照らす道Ⅹ

野外のカエルに会いに行く。

同志社大学
合原一究 研究員

「かえるの合唱」といえば、輪唱の代表曲のひとつだが、かえる一匹ずつがどのようなルールに従って鳴いているのか、なんと、これまで詳しくはわかっていなかったのだそうだ。というのも、さまざまな音にあふれる野外で、カエルひとつひとつの声を識別するのは至難のワザ。そこでマイクで検出した音を光に変換して発光するLED「カエルホタル」(理化学研究所・京都大学・東京大学と共同開発)を使って、他の個体とタイミングを合わせて鳴くカエルならではの唱法を解明。年に約2か月はフィールドワークに過ごすという、同志社大学の合原一究研究員を訪ねた。

カエルもビッグデータ!?

もともとは物理がすごく好きだったんですよ。高校受験の頃に、坂道をボールが転がる運動をすごくおもしろいと思ったのをきっかけに、やっと勉強を始めました。一方、生き物も好きだったんですが、こちらは趣味だろうと思っていて、全然研究するつもりはありませんでした。ところが京都大学に入ってから、野性生物研究のサークル活動で、島根県にある隠岐の島というところへカエルを探しに行った。そこでは、田んぼ一面にカエルが鳴いているんだけれども、"タイミングを合わせて"鳴いているように聞こえたんです。これはおもしろいと思いました。

ちなみに鳴くのは雄だけで、雌は鳴きません。もしも近くのカエル同士が、同時に歌ってしまったら誰が鳴いているかわからない。ちょっとでもずれていればカエル個体ごとの声を聞き分けることができます。つまり輪唱というのは、鳴いている本人が自分をアピールするための戦略なんですね。じゃあ、どうやってタイミング合わせているのか? 自分なりに研究のアプローチを考えたときに、やはり数理モデルを使って、物理学と同じように法則を見つけていこうと考えたわけなんです。

室内実験で2、3匹のカエルの鳴き声を調べるのは難しいことではありません。しかしたくさんのカエルがいっぺんに鳴いている野外で─まさにビッグデータのように─カエル"ひとりひとり"にリーチするのは難しい。また人間の耳では、10匹もいたらどこにいるのかわからないけれども、カエル達は聞き分けている可能性もありますね。そこで個々のカエルが、声を聞きながら自分の鳴き方をどう調整しているかを知るために、僕らは新開発の「カエルホタル」をいっぱい並べて、まず鳴き声を光に変換することにしました。この様子をビデオカメラで録画し、動画解析によって計測しようというわけです。マイクをたくさん使う方法もありますが、僕らの方法はなんといっても、光らせることによって声の状況が目でわかるおもしろさがあります。またセッティングや撤収が手軽な点も、生物を対象としたフィールドワークでは大事なことなんです。

ひとりで融合、エスタブリッシュして融合

今、僕が在籍する研究室では、日本に広く棲息するアブラコウモリを研究しているのですが、院生たちが主体的に研究をデザインしながら、ときどき数学、物理、化学分野の研究者も交えて、ポスターを見ながら自由に議論しています。違う分野の話に楽しく耳を傾けてくれる人が参加するため、議論が弾むという実感があるし、実際に共同研究に結びついた例もあります。融合研究は、特定の分野に縛られるよりも、何でも自由にできる環境のほうが進むような気がしています。

アブラコウモリは、ひと晩に約数百匹ものエサを捕らえるのですが、すると獲物を1匹捕った後にロスなく次の獲物を狙うことが大事だということになってきます。ではどうやって調べるか?─僕の場合は、コウモリが2匹の獲物の情報をどうコントロールしているのかというところを、数理モデルを作ってみたくなります。実際、そういうアプローチをとるのですが、そういったところが楽しそうだし、僕がやりたいことに近いんですね。

一方で、数理モデルだけやっていてもよくわからないことがあります。自然現象に興味を持ったら、たとえばカエルに関しては自分で実験もやって、フィールドで追いかけ回して、おもしろい現象のしくみを見つけたい。実験の人と共同研究を行う方法もありますが、フィールドと数理モデルを両方やっていこうというのは、僕がこだわっているところでもあります。というのは、分けてしまったら、おもしろくないかもしれない。実験データが出て、理論チームと打合せをするためにデータ整理して……というよりも、フィールドの現場で、後輩がカエルホタルを改良したり、僕が数理モデルを改良したりするほうが楽しいし、やっぱり速いですよね。

カエルの行動をもっと知る、次のステップへ。

昨年夏のフィールドワークで、パナマの熱帯雨林で鳴き方のよい「これだ!」と思うカエルを見つけて、ひと回りして戻ってきたら、なんとそいつが蛇に喰われていたんです。まだ蛇の口から半分体を出して「助けてくれ」って鳴いている!……そういうのを見ると、カエルも蛇も両方知りたいという気持ちが芽生えてきますね。なんでこいつは食べられちゃったんだ、いい鳴き方してたのに!(笑) 最初は鳴くタイミングをどう合わせるかという興味から入っていったんだけれども、今はカエルたちの競争戦略をぜひ知りたいというふうに、少し興味がシフトしてきています。

たとえばオーストラリアで雌ガエルの行動を追跡するのといっしょに、雄ガエルの鳴き声のパターンを録画して、どんなパターンが最も雌を惹きつけるかを調べたり、蛇を追跡して、どういうカエルが食べられやすいかを記録したり……。ところが僕らが今年調べた蛇の行動はあまり音と関わりがなく、どうも視覚に頼っているようなんですね。一方、パナマのカエルの主な天敵はこうもりなのですが、こうもりは視覚をあまり使っておらず、超音波で環境を測っています。例えば、水の上に生じるカエルの鳴き声の波紋で標的を定めている。その他、のような小さな昆虫もカエルを狙っています。鳴き声を聞いて鼻に留まるとしたら、どんな鳴き方をしているカエルが狙われやすいのか? このように見ていくと、こうもりにしろカエルにしろ、生物はそれぞれ限られた感覚器(センサー)を駆使して、高いパフォーマンスをあげています。まさに「センサー対決」を繰り広げながら生き延びていく、野外の生き物たちの行動戦略を知りたいですね。

では、どんな「答え」を想定しているのかと聞かれることもあるのですが、「もちろんまったくわからないから、やってるだけですよ!」という答えしかありません。ただ、わからない中でも、どこがおもしろいかは選ぶ必要があります。僕らがわかっていることは、誰もとっていないアプローチをとれば「これまで知られていなかったことがわかる」可能性があるということ。そのようにして、これからも研究を続けていきたいと思います。