コンピュータビジョンという研究をしていて難しいと思うのは、もしこれができたら、その先どういうふうにつながって、世の中の技術に役立てていけるのかというのをちゃんと見通す視点にいかに立てるかということです。この点について、東京大学の池内克史先生と米国カーネギーメロン大学の金出武雄先生から大変多くのことを教わりましたし、今でも先生方の研究への取り組み方を参考にしています。
コンピュータビジョンが人間の視覚に迫るのは、なかなか険しい道のりです。しかし見方を変えれば、コンピュータには人間よりはるかに高性能な視覚処理が、いくらでもできるのです。ある視点を持って今の技術レベルでどこまでやれば、次のチャレンジとして実現できるのか。この範囲をうまく見極めて、解いていくところが、なんといってもセンスの要るところです。そうでないと解けるには解いたんだけど、何に役立つのかわからないとか、解けたらすごいんだけど全然解けない、といったことにもなってしまうからです。
ではいったい、それにはどんなセンスが要るのかというと、理系的なアイデアや、理詰めで突き詰める力も必要ですが、どうもそれだけでは足りない。むしろ文章書くとか、物語作るような構想力が、勝負なのではないかと思います。いかに構想を立てるか、そしてそれを実行に移すのか。そのヒントとして、カーネギーメロン大学で、金出先生がよく話されていたことが書いてある本を推薦します。
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金出 武雄
PHP研究所 2004年11月 ISBN:4569775632 |