file03:「英語圏」と日本

日本の大学の英文科でのポストコロニアル文学の位置づけは、まずイギリス文学とアメリカ文学があって、それ以外を学ぶコースとして「英語圏」というかたちで設けられているのが一般的です。ただし「英語圏」という発想で勘違いしやすいのは、たとえばアフリカが「英語圏」なのかというと、実際に南アフリカへ行ってみれば、英語が話せない人はたくさんいるということ。英語を使っているのは、ごく一部のエリートだけなんですね。

ちなみに、日本の学生たちがどんな国に関心を持っているかというと、特に経済学を専攻している学生の間では、アジア・アフリカの国々に目が向いている人が多いです。彼らにとってイギリスはむしろマイナーな国であって、中国、韓国、場合によってはインドのことのほうがよく知っていたりする。商社に入った卒業生が、いきなり英語で喋らなければならない会議に出席することになったところ、行ってみたら参加者が全員インドの人だった、なんて話を耳にします。いろいろな英語文学を通じて、現代の世界にはいろんなタイプの英語を話し、書く人がいるんだということを知っておくべきだとは思いますね。世界語としての英語を習得するということは、「ネイティヴのように」ではなく、世界の人々と意見を交換するための道具の一つとして、英語を使うということですから。

TEXT : Asako Nakai, Rue Ikeya  DATE : 2010/10/12