「Instant Inkjet Circuits」は、一式数万円の家庭用のプリンタで電子回路をつくる環境をつくった点に特徴があります。
そもそもインクジェットという印刷方式は、それまでのプリンタに比べて、必要な材料を必要なところに必要なだけ置くことができるという点で画期的な技術でした。インクの一滴一滴を置いていくという処理ができるので他の印刷法よりも材料利用効率がいいんです。
そこで、これまでにも印刷で電気回路を作る「プリンテッド・エレクトロニクス」という分野があったのですが、これはむしろ産業用の技術でした。私たちも以前は回路を印刷してから1時間ぐらい熱焼結処理をしないと導電性が出ない産業用の金属ナノインクを用いていました。もちろん、工場での大量生産では問題ないのですが、手軽とは言えません。
今回使用しているインクは、塗った瞬間に銀を用いたインクと、紙との間に科学反応が起きて、電気が流れるようになります。専用紙も写真用紙並みの価格で買うことができますし、その他、このインクを用いたペンや回路制作キットなどの周辺製品も合わせ、大学のベンチャー企業を作って販売しています。