私はいま「対人関係構築能力」という言葉を使っています。確かにコミュニケーションの能力ではあるのですが、「コミュニケーション能力」という言葉は、私には若干、違和感があるんですね。

一般的に「コミュニケーション能力」と言われるのは、どちらかというと、会話を円滑にする力を指しているような印象があるんですね。上司と二人で出張へ行ったときに、上司を飽きさせないネタを提供する力とか、場の空気が壊れないように言葉を継ぐ力とか、どうもそんなものではないでしょうか。

一方、「対話」というのは、要するに切断なんですね。誰かが「昨日のテレビドラマがおもしろかった」と言った時に、「なんでそう思ったの？」と聞き返す。相手に、考えることを促すようなモードだと言えるでしょう。場の空気に支配されるのが「会話モード」で、場の空気を切断し、自分で場の空気をマネージメントするのが「対話モード」──このようにいくつかのモードを持ち、場合に応じて使いわけることのできる能力を「対人関係構築能力」と呼んでいます。