「生物そのものの進化の系統も、ゲノム情報によって、ずいぶん塗り替えられてきています。たとえば哺乳類の系統では、代表的なモデル動物であるマウスが、比較的ヒトに近いことがわかってきました。霊長類は、齧歯類と結構近い関係にあることがわかっていて、一方イヌとは離れています。
ちょっと有名なのが、イルカ、クジラ、カバの関係性です。どうもカバみたいな動物が水に潜ってクジラになったのではないか?──というのが最近の見解です。
かつて、カバはウシ、ブタ、キリンなどの蹄が偶数個に割れている動物の仲間「偶蹄目」に分類されていました。一方海に生息するクジラは「クジラ目」というまったく別のグループに分類されていたのです。ところがゲノムの情報を使って調べたところ、イルカ・クジラから見るとカバが一番近い親戚であり、カバから見るとイルカ・クジラが一番近い親戚だということがわかりました。
クジラ目と偶蹄目は、今、ひとつのグループにまとめられて、「クジラ偶蹄目」と呼ばれています。このようにゲノムによって、いろんな進化の系譜がわかってきています。