file 02:アリスとボブの量子鍵配送

通信の説明では一般に送信側を「Alice」受信側を「Bob」と呼ぶ習慣になっています。現在われわれは、高速の暗号通信を行う既存の製品に、将来にわたって機密性を保持できる量子鍵配送装置を加えた新しい通信システムの検証を行っていますが、この送信側をアリス、受信側をボブとして、量子鍵配送の概要を簡単に説明しましょう。

アリス側の装置はコンパクトで、現代暗号を使った高速な送信装置と、暗号鍵を生成する量子鍵配送装置から成ります。アリスが生成した量子鍵を無事ボブと共有したら、実際に送信したい情報を暗号化して送信します。またこの鍵は、一度使ったらもう使わない「ワンタイムパッド」で運用します。

さてボブの側には、アリスと同様の通信装置の他に、アリスから受け取った光子を検出する「光子検出器」があります。光子検出器の動作によって、どのような量子状態の量子が来たかがわかる、大事な装置です。万が一来るべき量子が来るべきタイミングで出るべき出力端子から出て来ないという現象が検出された場合、通信経路上のどこかで盗聴やエラーが起こった可能性が高いと考えられるので、さっそく照合を行います。これによってあやしい鍵を捨て、安全な鍵だけを使って通信を続けることができるのです。