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Youtubeなどの動画サイトで「Drosophila Courtship Song」で検索してみてください。
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ショウジョウバエは、羽を震わせて求愛歌を歌いますが、彼らの耳はちょうど自分たちの羽音ぐらいの帯域に特化されていて、それ以外の音は聞こえません。しかし大気はさまざまな振動に満ちていますから、むしろノイズが少なくていいのではないかと私は思っています。耳だけでなく生物の受容器というのは一般に、いわばフィルター装置であって、要らないものをいかに排除して、自分が欲しいものだけを選び取るかというものでもあるわけです。
蚊も音を使って求愛するんですけれども、これもなかなかおもしろい行動です。ショウジョウバエの場合には歌うのは雄だけですが、蚊の場合は雄も雌も羽音を使って歌います。そこで雌の出す音を流しておくと、雄が音のほうへ寄ってきて、雌と雄で羽音を聞き合うような行動をとります。そして二匹の音程がずれていると、雄は自分の音を「チューニング」して、合わせて歌うことが知られています。雌も同様に、相手の羽音に合わせてチューニングします。このようにして、デュエットが成立するわけです。
ところで今回「影響を受けた本は何か」という質問を受けて、ふと大学生のときに読んだ本を思い出したんです。生物学・動物学の研究者だった桑原万寿太郎氏の本です。
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桑原 万寿太郎
慶応通信 1956年 |
私は、自分以外の生き物が何を感じ、何を考えているのかを知りたいと思っていたものの、当時はまだそのためにどうすればいいかわかりませんでした。この本には動物がどんな物理刺激をどう受容しているかを知れば、ある程度わかるんじゃないかと書いてあって、なるほどなあと思ったんです。古い本なのですが改めて開いてみると、目次の中にはなんと「虫の音楽」という章があることもわかったりして、新鮮です。