新井:田中さんの活動を見ていると、分野のなかで閉じようとしていないということを感じます。やはりインターネット時代と言われる状況を考えると、国文学/日本文学も、本来もっとオープンでもいいのではないでしょうか? 重要な文献はとりあえずインターネットで見ることができたり、どこが所蔵しているものでも縦横に検索できたり……。
田中:それは今、始められているところですね。たとえば「慶應義塾図書館デジタルギャラリー」 「京都府立総合資料館所蔵貴重書データベース」などで、直筆本・写本・絵巻などが公開されつつありますが、実はまだまだ膨大にあるんです。このような資料を情報公開することによって、専門以外のいろんな人の「見る目」に触れますから、たくさんの情報から何をピックアップするかという点で、アイデアをやりとりできる可能性が出てきます。他の分野の研究者と共同研究をして、もっといろいろな意見を入れていかなければいけないと思っています。
また国際化という面では、日本文学の古典を英語や他の言語で発信することも必要になってくるでしょうし、逆に外国人だからといって、日本の古典がわからないということも絶対ないと私は思っています。外国人だから違いはあるけど、文化を共有する人はいるはずだからです。
現在、誰もが読めるテキストが揃ってくるなど、研究のための土台はもうありますので、それをどう活かすかが課題です。ボロい家に継ぎ足し継ぎ足し支えしてみたいなことをしていると、ちょっとしたことでバラック以上のこわれかたをするような気がする。土台をきれいに整地して、そこから新たなものが建てられるようにと思っています。