クリスマスは、イエス・キリストの降誕を祝うキリスト教のお祭りだというふうに考えられていますけれども、ルーツを辿ると、ヨーロッパのさまざまな伝統や、キリスト教の枠組みに入らない、いろんな習俗風習が組み込まれていることがわかります。
それが宗教なのかどうなのかという問題もありますが、ただキリスト教は世界宗教であって布教を行いますから、各地に伝来した時にその地へ根付くために、在来の信仰や習慣をうまく吸収していったと考えられます。
たとえばクリスマスは元来、冬至のお祭りなので、クリスマスのイメージの中には、一番寒い時期に死者の霊が来るというゲルマンの伝統が含まれている。クリスマスツリーもドイツの習慣が定着したものだと言われています。一方、冬至ということはこれから日照時間が伸びてくるわけですから、豊饒を祝うという意図もあります。このあたりはローマ的な豊かさを祝い、春に向かうためにおいしい物を食べて飲んで、歌って踊って、という要素がある。このようにして出来ていったクリスマスの祝い方が、19世紀~20世紀にかけてヨーロッパの他の国にも伝わっていきます。
これがアメリカへ渡ると、産業化や、資本主義あるいは物質主義の要素を身に付けて、プレゼントを贈ったりカードを飾ったりする要素が加わってきます。そして戦後、特に占領下に日本に伝わって、今のかたちへつながっているんですね。