file 01:融合こそが戦略である

ビッグ・プロジェクトが可能だった頃には、大きな予算が降りて新しく研究施設が建てられて、そこに最高の人材と、実験装置や観測装置を集めて、国際プロジェクトをやっていくというようなかたちが通例でした。まず場所がある、そこに投資をしていく。米国のSSCなどはその代表例でした。しかしそれが難しくなった時に、それでも、過去と同じ程度のサイエンスを実現するにはどうしたらいいか経済学的に考えれば、研究者が採る道というのは、やはり融合研究だったんだと思います。

研究資源には、実験装置だけではなく、データ、人材ネットワークなど、いろんなものがあります。そのようなリソースをみんなで共用していく。最初に動いたのは国際連携という、ひとつの拠点を建て、その費用を各国で分担するようなかたちの連携ですね。その後さらにできる実験が限られてくると、モジュール単位で実験をしたり開発をしたりして、分担して実行するようになっていきます。そして、わかったことをデータとして共有したり、データの解析は別の人材が行ったりといった連携を行っていく。スパコンなどのパワフルな計算機資源をネットワークごしに共有する「グリッド・コンピューティング」も、同じ考え方だと言えるでしょう。そうすることが研究成果を上げるためには、戦略として必須だということになっていたのだと思います。