数字的なものと人間というのは違うものであるのに、数字が魔力のように人を動かしている──そんなふうに思われる現象がいくつかあります。たとえば偏差値もそうですし、少子化、視聴率……等々。このようなケースでの計測や数値化という問題が、私には気になるんですね。
私はいわゆる団塊ジュニアの世代で、高校へは私学の特待生として進学したため、お金をもらって勉強しているから、ちゃんと勉強して、受験戦争に勝たないといけない、という使命感がありました。そんなこともあって、偏差値や点数には取り憑かれていたんですね。また早くから進路を選択しなければならず、文系・理系という区別がどうしてあるんだろう? とずっと思ってきました。この制度だと、どうしても、どちらかを選んだために明らかに抜け落ちてしまう知識があります。実は私は、高校2年までは理系を選択していて、どっちにもなりきれないという思いを抱えたまま、大学へ入りました。
入学してからもまだ理系・文系についてモヤモヤした気持ちが続いていたのですが、大学3年で進路を選ぶ時になって、初めて科学史・科学哲学という研究室があることを知り、これなら自分の悩みに答えてくれるのではないかと期待して進みました。卒論の段階になっても、私は最初、知能指数というテーマを考えていました。つまり知能指数というのは、人間の能力を数値化するものだからです。進学でも点数にこだわっていたし、文系と理系に分かれたのも数字の成せる技なのではないか、そんなこだわりや疑問から思いついたのだろうと思います。
そんな時、指導教員となった先生に「きみ、社会現象の数学化をやってみたいなら」と、コンドルセを教えてもらったんです。 ──それがコンドルセとの出会いでした。