計測工学という分野では、まず基本的に「何を取りたいんですか? はっきりと定義しなさい」というところからスタートします。この思想の下、「何がゴールかはっきりしろ! そうすれば洗練されたシステムのかたちが見えてくるはずだ」ということを訓練するんですね。つまり、インプットとアウトプットを直線で結んで、ミニマムにデザインすることが重要です。ゴールとなる出力を考えた時に入力はどうあるべきか、データが得られた時点でどういう処理をすべきか、プロセスの1つ1つにおいて一切の不確定性を排除するようにきれいにデザインする。 そんな中で僕らの場合は、やはり高速性というのを軸に据えています。速さを極限まで上げて、その間、対象がどう動いているのか全部見える世界をつくることによって、人間の目にはわからない現象を取りこぼしなく見る。この世界に立って、ニュートラルな発想で捉えれば、あるべき姿でないシステムやこれまで実現できなかった応用がシンプルにデザインできることが見えてきます。ここを起点に、ゴールからトップダウンに設計して、その下に必要な技術を結集させていきます。そしてボトムアップにも独自の技術を使って、トップとボトムをつなぎ合わせた境界線を狙うようなかたちでシステム設計をするわけです。 計測工学を学ばれる方には、ぶ厚い本なのですが、ぜひ『計測工学ハンドブック』という本をお勧めします。ハンドブックというと歴史が深いイメージがありますけれども、これは2001年刊で、意外と新しい本なんです。このようにデータをとったらうまくいきますよ、ということが、多岐にわたって非常にわかりやすく書いてある。特に今のようにコンピュータが発達する以前、あまり計算パワーに頼れなかった時代に、なんとか工夫してうまくデジタル量に変換しようという方法論がすごく洗練されているんです。 たとえば実世界のアナログ情報を、すぐにデジタルに変換してコンピュータで計算するのではなくて、アナログのままで情報処理をしたり、別の物理量に変換したりして、測る量が見えるというところまで落とし込む──といった方法がうまく設計されていたりします。「何を取りたいか」という部分をどうするのか、もう少し突っ込んでみるといろいろできることがわかるんですね。さほど知られているわけではない計測工学ですが、読んでみたら、意外とみなさんが使っている技術の一部が書かれていたりするのではないか、と思います。
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interview 渡辺義浩 助教 インタビュー