現在われわれは、社会インフラとしてのICT技術が発達した時代に生きています。装着しても違和感がない、活動しても壊れないセンサーによって、日常的でアクティブな人間の生体情報が計測できるようになれば、これらのユビキタス環境とつながって、エレクトロニクスの新しい展開が見えてきます。そこで、どういうシーンで計測するとどんなことができるのか、企業の方々と一緒に開拓していく研究にも取り組んでいます。
センサーを実空間にばらまいて、物理データをどんどんインターネットの中にとってくるということを、アメリカでは「センサーネットワーク」と言ったり、欧州では「アンビエント・インテリジェンス」と言ったり、いろんな呼ばれ方をしていますね。物理情報なので、水もれしているとか、橋が崩落しそうだとか、いろんな情報が重要になってきます。中でもみんなにとって一番関心があって、価値が高い情報は何かと考えると、究極的にはサービスの対象となる人間ひとりひとりについて情報が、最も価値があるのではないでしょうか。
現在では、スマートフォンを持っていれば、その人がどの地点にいるかがわかります。加速度センサーなども付いているので、その人がふらふらしているのか、あるいは急いで移動している途中であるといったこともわかります。しかしこれらは、外から分かる動きの情報だけなんですね。このような情報の次に来るのは、人間の内面に関する情報なのではないかと考えています。センサーによって計測された人間の体の中の情報も、やはり大きな情報空間の中へ入っていくだろうと考えられます。
ただ位置や動きだけでも個人情報ですから、取り扱いについては法的な整備がいろいろと追いつかない、社会的なコンセンサスが得られるのかなど、いろいろな問題があります。しかし明らかに便利であったり、今までできなかったサービスが可能になったりしていることから、後戻りできなくなっているのが現状ではないでしょうか。