この法解釈学という学問の性格やその成立過程については様々な見方がありますが、法テクストを解釈し釈義を付すという法解釈学の伝統的なスタイルは、6世紀に東ローマ皇帝のユスティニアヌス1世が編纂した『ローマ法大全(Corpus Iuris Civilis)』が11世紀になって再発見されたことに、一つの起源があると考えられています。イタリアのボローニャの法学校では、12世紀初頭のイルネリウス(Irnerius)以来、スコラ神学における聖書解釈の方法を用いた『ローマ法大全』の解釈に関する講義が行われ、個々の法文に対する数多くの註釈が、註釈学派と呼ばれる法学者たちによって積み重ねられました。それらの成果は、13世紀にアックルシウスによって、「標準註釈(Glossa ordinaria)」として集大成されました。それぞれのテクストについての適切な理解にたどりつくために、様々な思考を働かせながら注釈をつけていくという作業は、この時代からの伝統なんですね。