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おとなりの研究者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
長寿医療工学研究部
流動研究員

自然科学研究機構 生理学研究所
大脳皮質機能研究系 心理生理学研究部門
准教授

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
部長

京都大学
大学院医学研究科 附属高次脳機能総合研究センター
特定准教授

明治国際医療大学
医療情報学
教授

file 03:問題解決しなければいけない

加齢によって動作が緩慢になるなど運動機能の衰えが出てきたときに、一番気を付けるべきことは転倒です。骨折してしばらく入院ということになれば、寝ているうちに認知機能の低下が進む場合もあり注意しなければなりません。これまで転倒の原因は主に筋肉や骨格(運動器)の老化によると考えられてきましたが、脳活動の計測結果を見るとそれだけではなく、体のバランスや運動の調整など運動をつかさどる認知機能の問題も、かなり関係しているのではないかと予想されます。認知機能が低下するともの忘れの傾向が出てくるだけでなく、いろいろな物の場所がわからなくなる、自分の居場所が分からなくなるなど、見当が失われた状態になります。さらに脳全体では認知機能と運動機能とのスクラムの組み方が加齢によって弱くなる傾向が見られます。そういった脳の活動の変化も、転倒の原因になっているのではないか─そこで最近モーションキャプチャによる測定を採り入れて、高齢者で転倒しそうな方の日常生活の動作にどのような特徴があるか、脳活動とどのような関係があるかを探っています。

ところで認知症は介護の上での負担だけでなく、いろいろな社会問題の背後で事件や現象のキーになっていることがあります。たとえば車の運転と認知症との関わりも重大なテーマですし、高齢者がだまされやすい「オレオレ詐欺」のような問題を採り上げて、加齢とへの反応の関係を研究している方もいらっしゃいます。画像を使った脳活動の研究は、実は、このような社会問題の解決方法を探るのにも役立てられています。

私自身の関心は、画像を使った脳の研究によって人間の本質や人間の行動メカニズムをいかに捉えるかにありました。最初から加齢を研究対象としていたわけではありませんが、世の中にニーズがあって、それに対して今まで自分が研究してきた経験や知識を、活かすことができるのであれば、その世界が自分を待っていたのだと考えています。そして実際に着手してみると、まだまだ分からないことが多いのですが、加齢によって脳の活動はこんなふうに変わってくるんだ、と見えてくる。画像を通してひとつの発見があると、何を反映しているのだろう、どういう意味があるのだろう、と次々と疑問が湧いてきて引きずり込まれて行きます。まさに「人間到処有青山(じんかんいたるところせいざんあり)」です。

しかしそういった研究がどんな価値を創成しているかと問われると、なかなか難しい。価値創成を直接の目標にしているというよりもむしろ……研究というものはもう少し職人的な感じがするんですね。われわれ研究者が何に答えられるかというと、もっと具体的な問題解決だろうと思います。それは自分の関心から出たものであれ、ニーズから出たものであれ、とにかく問題解決をしなければいけない。それに日々取り組んでいるのだと考えています。それが積もり積もって何らかの価値につながれば嬉しい─と考えています。