研究の進め方については、やはり今、学会ごとの学問分野の違いのようなものは、とても小さくなっていますね。特に海外では、人間の協力行動をどう考えるかとか、人間の互酬性や互恵性をどうするかというふうに、興味単位の人々の集まりがある。心理学者、経済学者、生物学者などいろんな人がいますが、要するに興味そのものを共有しているんですね。
たとえば生物学者と私がうまく組める、といったことがあり得ると思うんですよ。彼らはモデルをつくって、そこから引きだされた仮説を検証する。またそういったときに、実験というのは、異なる分野をつなぐすごくいい道具だと思いますね。また実験の結果をどうみるかといった解釈の問題が出てきた場合にも、いろんな分野の人が実験して、お互いの解釈をつき合わせていって、「そこ、不明確じゃないか」と批判し合うことで、だんだん正確なものがつくれるようになっていく。科学というものは、基本的にはひとりでやるものではないです。
科学で重要なのは、やはりレプリケーションできるか(再現性があるか)ということだと思います。よくネイチャーに出た論文が、他の人が実験したところ同じデータが出ない、ウソだという話になることがありますね(笑)。あれはやはり、ウソをついてもいずれはばれるというのが科学的な実験だからです。ところが社会科学にはそれがない。最後まで解釈の問題だと言い張ればそれで成り立つから、理論的な立場の対立がいつまでも続くんです。実験をうまく使っていけば、それができなくなるというのも、実験の大きなメリットの1つですね。