file 01:シドニー・オペラハウスの場合

建築デザインの人でも構造がわかるということはプラス面でもあると同時に、構造計算から自由に発想できないというマイナス面もよく指摘されるところです。逆に海外の建築家の場合には、自由に考えたらほんとうに「建たなかった」という事例もあるんですね。

有名なのは、去る2013年10月に開館40年を記念するイベントが華々しく行われたシドニー・オペラハウス。設計したのはヨーン・ウッツォンというデンマークの建築家です。現在は20世紀を代表する建築作品のひとつに数えられますが、当時、彼がデザインしたコンクリートシェル構造を実現する方法がどうしても見つからず、これによって工事は頓挫し、途中からウッツォンは設計者の座から離れることになりました。結局予算は14倍以上にふくれ、納期は10年も遅れて、オペラハウスは1973年にオープンしました。