file 02:デンマークと散歩

早稲田大学博士課程在学中、僕はデンマークへ留学をしました。デンマーク人は、非常に生活スタイルやクオリティオブライフを大切にする国民性です。そして僕のデンマークの恩師は、初めて「シックビル」の問題を提起された方でした。

その後1996年頃にシックハウスの問題が大きくクローズアップされ、当時の日本では、この問題は総合的に考えられていませんでした。そこで日本のある住宅で測ってみたところ、ホルムアルデヒドトルエンといった、有害な化学物質がケタ違いに濃度であることがわかったんです。これをきっかけに測定方法が確立されたり、対策がとられたり、基準が整えられるなど、問題解決へ向けた動きが急展開していきました。

最近ある研究者によって「家が寒いと散歩しない」という研究結果が発表されているのです。デンマークに住んでいる時にパーティをすると、外はもうマイナス10度ぐらいに下がっているのに、何人かのグループがふらっと散歩へ出ていく。戻ってきて暖かいものを飲んだりして少し暖まってから、解散するということがよくありました。もし室内が暖められていなかったら、そういうことはできないですよね。

寒い家に住んでいると、歩く歩数が減り、おそらく健康にも影響するでしょう。浴室や居室の暖房も、単に省エネという観点だけでなく、倒れる方が減少すれば、国が負担する医療費も少なくすることができるかも知れない。これからはますます、このような観点から住宅の設備や環境のあり方が、考えられるようになってくるのではないでしょうか。