file 01:作物を作るだけでは成功しない植物工場

山本さんのもうひとつの大きな研究テーマが、植物工場である。人工的な光を当てて作物を育てる、植物工場。もともとは、冬に日照時間が少ないデンマークで補光用として始められたが、最近ではハンバーガーチェーンの店舗や少し高級なレストランでも見かける。葉物野菜を店舗で育てて穫りたての新鮮な野菜を提供できるという「店産店消」も、植物工場のメリットと言われる。また、食料の安定供給ができ将来の生産圃場としても期待されるなどの利点が語られる。露地栽培や施設(ハウス)栽培のように、日照不足や異常な気温による生育不良、台風や大雪などの被害を受けにくいこと、害虫の被害を受けにいのも特徴だ。

こうした植物工場の「利点」から2000年代以降、第3次の植物工場ブームが到来し、多くの会社が植物工場事業に参入した。「住宅メーカー、鉄鋼メーカー、食品メーカーをはじめ個人で会社を興して参入することもあり、乱立。しかし事業が継続しない会社も現れています」と山本さんは語る。なぜ参入しても長続きしないのか? 全国にどのくらいの会社がありどのような運営をしているのか、そして流通はどのようになっているのか? など、生産技術のほかにも考えるべきことが数多くあることを指摘する。