「植物工場は、建設費などイニシャルコストが高いのです。そして、照明と室内空調を使うために電気料金をはじめとしたランニングコストも決して安くない。そうした環境で作れる野菜は1袋100円程度です」。それならばたくさん売れる作物を栽培すれば利益は出るのでは? 「そう簡単でもありません。ほうれん草や小松菜などの汎用性の高い野菜は消費者にとっても必要だし需要も大きい。その分価格競争は厳しく、つねに電気代がかかる植物工場による生産は不向きです」。すると、カイワレダイコンやアイスプラントなど、汎用性は低いが単価の高い野菜を扱うことになる。「そのバランスを見極めることが大事なのです。入り口(生産)から出口(流通・消費)までの一連の設計、アドバイスなど、研究やプラントのさまざまな状況を知って助言できるベンチャーが必要だと考えています」。新しい技術を導入するには、野菜が栽培できるかどうか、栽培できる技術があるかどうかだけでは不十分で、どんな作物をどのくらい作るのか、どこでどのように売るのか、いくらで売れればコストに見合ったビジネスとなるのかを組み立てて考えなければならない。「新しい技術には見えない部分もあり、研究もコンサルティングも必要です」。これも技術と実用化の関係を知る山本さんの視点である。