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おとなりの研究者
日本大学
文理学部社会学科
教授

筑波大学
システム情報系
准教授

宇都宮大学
地域デザイン科学部 社会基盤デザイン学科
准教授

公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
人と防災未来センター 研究部
研究員

東北大学
災害科学国際研究所 情報管理・社会連携部門 災害アーカイブ研究分野
准教授

file 02:東日本大震災における、私自身の後ろめたさ

わたしは修士論文で原子力事故と環境汚染の歴史、JCO臨界事故をテーマとして扱いました。この内容は『風評被害―そのメカニズムを考える』(光文社,2011)という本でまとめています。
福島原発事故の前に放射線災害を研究していた人は、ほとんどいなかったと思います。原子力業界の方からは「重大な原子力事故は10万年に1回くらいしか起こらないのに、原子力防災などをなぜ研究するのか」とも言われてきました。環境研究の方からは「原子力が安全だといいたいのか」と言われました。それでも原子力関連施設の小さなトラブルはあり、そのたびに周辺の産業は風評被害という形で打撃を受けてきました。風評被害は人々の心理の問題であり、それが産業にどのような影響を及ぼすかということは、非常に重要で、複雑な構造をはらんでいる場合が多い。それはまさに放射線災害の一端だったのです。ですから、過去の原子力事故を研究したら、たまたま風評被害の研究になっていったというだけなのです。しかし風評被害の実態の研究に留まらず、もっとできることがあったはずではないか。原発事故そのものは予測できなかったとしても、放射線防護、緊急避難、長期の避難、風評被害対策、損害賠償など放射線災害そのものの研究をもっと行っておくべきだったと後悔しています。今は風評被害ももちろん研究していますが、放射線災害の社会的影響そのものや原子力防災を研究しています。

たとえば原子力事故の際は、避難と言えば「広域避難」について論じられることが多くなりがちです。しかし、放射線防護の一番のポイントは、健康被害をいかに小さくするかであって、どれだけ遠くに逃げればよいかということだけではありません。事故直後にもっとも重要なのは、屋内退避です。放射性物質が大量にあるのに、屋外に出て避難するのは適切ではありません。屋内に退避し、線量を測ってその数値がある程度低かったら、遠方に避難するという段取りが必要です。線量を測り、もしも高かったらヨウ素剤を飲んで避難する。また、放射性物質のある屋外を通って避難したのなら、必ず身体スクリーニングを行う、屋内に入るときに上着を脱いで捨てる、頭髪が高線量だったら髪を切る、皮膚に付着した物をぬぐう、場合によっては洗浄、除染をして、少しでも被曝を防ぐ必要があります。
SPEEDIの活用、身体スクリーニング、身体除染の周知・啓発など、防災の研究者として、できること、やるべきことはもっとたくさんあったはずだと思っています。