file 04:学生とのインタラクション

20〜30歳ぐらい年上の方と話していて、時々違和感を感じるのは、今の若者はいいよね、誰でもパソコンを持っているし、性能も高いので何でも出来る。昔はひとつプログラムを書いたら、一晩待たなければ結果が出なかった……と。けれどもその頃はコンピュータが使えただけで、特権的なことだっただろうと思うんですね。ある意味では、何でも新しいから何でも研究になった。今やみんながパソコンを持っている。パソコン上で何かやってみたいと思って調べてみたら、だいたいもう既にあるし、売られていたりするわけです。

そういう環境下で、学生がコンピュータで新しいことをやるというのは、結構たいへんだと思うんですけれどもね。ただこちらからテーマを与えるよりは自分で考えなさい、と。当たり前かもしれないけれども、その練習が一番大事だと思っています。

そこで僕の研究室では、学生が「こういうことをやろうと思います」というたびに、それはいいとか悪いとかいうコメントをする。学生はコメントを元にしてまた考える、ということを繰り返していますね。これによく似ているなあと感じるのが、アートやデザインの学校で自分たちの作品を持ち寄って行うクリティーク(批評)です。絵の技術的な側面だけでなく、先生も学生もみんなが見て、いろいろと意見を言い合う。実際に手を動かして作ったものに対してフィードバックをもらう、そこでまた考えて……というインタラクションに意味があると考えています。