file 04:宗達展、アメリカへ

これまで僕が取り組んできた俵屋宗達や琳派のテーマで、2年後にアメリカで展覧会を開催することが決まったんです。

そもそも尾形光琳は、フランス人によって発見されたんですね。当時パリでは前世紀末からの印象派の流れがあり、一方次第に「装飾的」と言われる様式を持つアール・ヌーヴォーが勢いを持ってくるわけですが、そのような世界的な視野の中で光琳の日本画が「装飾」的だということで、高い評価を受けるわけなんです。また日本の画家たちも、岡倉天心門下の菱田春草(1874 - 1911)や横山大観(1868 - 1958)がヨーロッパに渡り、帰国して非常に装飾的な絵を描き始めます。

ではこの「装飾」とは何なのか?─まず日本語の「装飾」という言葉からして、非常にあいまいですよね。たとえば宗達は装飾的かといえば、ある人はそうだと言うし、ある人は全然そう思わないだろうと思う。ところが今、この概念を海外で説明しようというときに、どう共有されるべきかが大問題なんです。ひとつは言葉の問題として非常に難しいということもあるし、なんというか……かみ合わない!

そこで今、少なくとも19世紀の終わり頃から始まる美術上の問題点を、それこそ白紙に戻して整理しなければいけない、と考えています。今それを問い直すことは、非常に重要性を帯びているような気もしているんですね。

古田 亮 (著)
平凡社   2010年4月   ISBN-13: 978-4582855180