地学の研究生活では、アウトドアが体験できるのも魅力のひとつです。年代を決めなければならない崖を目の前にしたら、まず地層面の出ているところを選んで、そこにある岩石をたとえば1メートルごとに何十個というふうにして、ハンマーで採取していきます。ちなみにその際、必ず古いほうから新しいほうへという順で進めていくのがこの分野の習慣です。説明する際もそうなのですが、採取もなるべく下から採っていきます。
またこの時、とても大切な道具がハンマーです。筑波大学を始め国立大学の地学教室では毎年年末にハンマー納めという会を行って、一年間の労をねぎらっています。ハンマーは案外消耗品なんです。
また、岩石を取り出してから、その中に埋まっている微化石を取りだす方法は1930年代ぐらいに確立されたものです。強い酸性を持つ液体を使って岩石を溶かし、顕微鏡で見ながら、砂の中に混じっている微化石をひとつひとつ筆で選り分けていきます。
私自身は、小さい頃に近所で化石が出たり、小学生の時に読んだ推理仕立ての科学漫画で古生物学に興味を持ったりしたものの、いわゆる化石マニアではありませんでした。むしろ古いもの、誰も取り組んでいないものについて考えを巡らせるところに魅力を感じています。コノドントは現存しない生物ですが、もし今も生き残っていたとわかったら?……研究者はむしろ、ちょっとがっかりするんじゃないでしょうか。「なんだ生きていたの。謎に包まれているからよかったのに」って(笑)。
しかしながら、せっかくP-T境界を生き残ったコノドントも、三畳紀の終わりの絶滅期にぷつりと死に絶えてしまいます。この絶滅では、たくさんの爬虫類が死んでいく中、恐竜だけが生き残ってその後繁栄の時代を迎えるのです。