今はどんな研究をされているのですか?

アルマ計画という、21世紀最初の大型望遠鏡の建設プロジェクトに取り組んでいます。パラボラアンテナ型の電波望遠鏡を、南米チリのアンデス山脈の中、標高5,000mのアタカマ砂漠に建設しています。東アジア(日本と台湾)、北米、ヨーロッパ、そしてチリ、あわせて20の国と地域が協力して計画を推進しており、現在、私は東アジアのアルマ・プロジェクトマネージャとして計画に参加しています。アルマ計画を始める上で大きな課題だった1つが、建設場所です。標高の低い場所に望遠鏡を建設しても、大気、特に水蒸気の影響で宇宙からの電波をうまく受信できないため、今考えられるベストな場所として、南米のチリ・アタカマ砂漠が選ばれました。標高5,000メートルの山頂では酸素濃度は海抜0mに対して約半分。これ以上薄くなると人体に危険だと言われていますから、ぎりぎりのところで我々は仕事をしていることになります。アルマ望遠鏡は、66台のパラボラアンテナを組み合わせて、ひとつの望遠鏡として働かせる「電波干渉計」型の望遠鏡です。国際プロジェクトで一つのものを作り上げるということはとても大変で、当然英語を使わなければならないということもとても大変です。でも、こういう環境で研究ができるっていうことは、やっぱり面白いですね。

私はブラックホールに興味があり、現在は双子のブラックホール「バイナリブラックホール」の研究を行っています。また、「我々は一体どこから生まれて来たのか?」といった素朴な疑問にも、科学は答えていかないといけないと思っています。そこで、アルマ望遠鏡の後継として、第2の地球探査を目指した次世代望遠鏡計画の検討も行っています。

アルマ望遠鏡により、生命の起源に迫ることが期待されています。大きなことをするためには一声20年かかると言われていますから、アルマ望遠鏡による生命の起源を探査する研究などを推し進め、さらには現在我々が検討を開始した次世代の大型望遠鏡計画を実際に推進するのは、皆さんの世代の人たちだと思います。

ところで天文学といえば、ガリレオは、同時代の多くの人々が天動説を支持していたのに、地動説を主張して終身刑の判決を受けましたね?─科学の新しい潮流は、既存のカルチャーや思想とたまに衝突する時があります。そんな時こそ、その科学的なテーマが科学者の頭の中から飛び出して、広くは文化や既存の価値観にも深く関与していくことが出来るチャンスがあると思うんです。もっと言えば、科学がエンターテイメントに近づいていけたらと思っています。新しい物質を発見するとかも大事なことだとは思うのですが、むしろ新しい学問分野が生まれるようなところまで自分の研究が届いてくれれば面白いなあと思っています。ただ、こういったところに到達するにはまだまだ難しさがあり、結局のところ地道に研究を進めていくなかでしか“新しい何かは生まれない”と思っています。