今の学生は優秀だと思います。ただ、テーマや問題を与えてあげるとうまく答えられても、自分から問題を探し出して新しいところを開拓していく、というのが下手かなというのはあります。高校までは問題を出すように言われることはあまりないと思うんですよね。そんなこと言っているとやっていけないですからね。 大学生がモヤモヤする大きな原因はそこだと思うんですよ。自分がいったい何者なのか、何をすべきかを突然フリーハンドで考えろと言われると、どうしたらいいのかわからなくなる。もちろんやりたいことはあって、考えたいこともあるけれど、それを整理しきれずにモヤモヤという感覚になるんですよね。悩む時期に整理をして、自分の目標を決めるときにとりあえず今やるべきことに優先順位をつける、という思考法を身につける必要があります。その半分は経験によって得られるものだと思います。大学生はピカピカの一番いいものを選ばなければいけないと思い込んでいますが、あまり経験もしていないのにそんなことが簡単にできるわけがありません。仮の目標を複数持って、オーディションのように何度も審査を重ねてベストを選んでいけば、もう少し気が楽になれるし、間違えずに選んでいけます。 大学は皆さんが思っているよりもっといろんな使い方ができる場所だと思います。人生をやり直したくなったり、方向転換をしたくなったりした時に、大学でもう一度勉強して何か新しい知識を身につけて再び社会へ出ていくというのが大学の在り方としては適切なんだと思います。理想はそうなのですが――でもみなさんは既に入ってしまっているので(笑)――もうひとつは出口が見えていなくて、大学で出口を探そうというパターンで、みなさんはこれに近いと思います。ここでやるべきことはいろんな可能性を探って、芽を育てていくことです。一つだけ植えるというのもありますが、あまり得策ではありません。いろんなものを植えて育てた中で、どこかの段階で間引きをして、いいと思うものを立派に育てるというのが正しい選択じゃないですか。今はいろんな芽を出してみるという時期だと思います。最終的にはかなりの部分が間引かれてしまうかもしれませんが、間引くのがもったいないから一つだけしか植えないというのはおかしな話でしょう。それから間引くタイミングは普通で考えているよりもっと遅くていいと思います。ちょっと芽が出てきた段階の方がよかったかもしれないというのではもったいないですよね。